「こっちは誰もいないわ。よし、オッケー」
 「”エクスカリバー”、右側はどうだ?」
 「”レーヴァテイン”、寝ぼけてんのか?右側は今”クラウソラス”が確認しただろ」
 「歩いてたら左右なんて変わるでしょ。方角で言いなさいよ」
 「方角が分かったら苦労しないんだよな……」

 塔の中、壁の中で何が起きているかなど知る由もない三人は緊張感に包まれていた。
 たった今から、「壁を圧倒的な威力で破壊する作戦」を決行しようというのだ。
 これまで何人もが壁を破壊しようとして失敗しているのを見た。
 何人もが上空から壁を越えようとして、見えない障壁に阻まれ失敗しているのを見た。

 「まあいいや。準備するぞ?」

 作成した双剣を宙で掴んだ少女の問いに、あとの二人が頷きで返す。

 「じゃあ、一分後ぐらいに、三、二、一、で」
 「了解!」
 「問題ないわ」

 めいめい剣を用意して、集中力を高める。
 “エクスカリバー”の構える、黄金の剣の切っ先から溢れる光は、真っ白な壁のただ一点、攻撃の目標を示している。
 鉄の匂いが、空気の焦げる匂いが、三人の周りに漂う。
 三人と、三人の手に握られる合計四振りの剣の準備が整った。

 「いくわよ」
 「ああ、いけるぜ」
 「ばっちし」

 三人は視線を合わせて頷く。

 「……三、二」
 
 それぞれが気合を込める声。数えて正確にタイミングを揃えて、
 ただ一点に向けて一撃を――

 「………………っ」

 滅茶苦茶な閃光、高熱。
 放たれた無茶苦茶なエネルギーの塊は彼らの狙い通りに直撃するものと思われたが、
 その前に何かに阻まれ、壁に届かず、放水を受けた岩が水流を分散させるかのように、
 閃光と血飛沫と豪炎とが、意味もなく宙に広がっていく。

 「嘘だろ……」

 一撃に全霊を込めた三人は、急激に活発化させたレネゲイドの侵蝕に耐えながら、
 エネルギー塊を受け流して現れた人影を見据えた。
 一番初めに「あること」に気付いたのは、“レーヴァテイン”であった。

 「待てよ、あれって」
 「え、あれ、■■じゃない……!」
 「おい!ぼーっとすんなバカ!離れるぞ!」

 二振りの剣を放り棄ててレネゲイドに還した”エクスカリバー”が、
 “クラウソラス”と”レーヴァテイン”の腕を掴んで引っ張る。

 「考えるのは後だ!今の私たちじゃ勝ち目なんてねぇよ!」






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