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夜空色の装束の戦闘員は、まるで無限に溢れ出してでもくるかのように、斬っても斬っても次々現れる。
その強さも、戦い方も様々で、集団戦法をとる一団もあれば、各個で戦う者もある。
ヒトの姿をしている者もあれば、まるで生気を感じられない影のような者もある。
共通して言えるのは、全員がオーヴァードに違いないということぐらいだろう。
「おまえ、さっきから邪魔なんだけど!」
「ひどくね?俺の範囲に入ってくるからだろ!」
「あーもう、うるさいのよあんたたち!」
その戦闘員集団の真ん中で剣を振り回しながら、一際騒がしい三人がいた。
一人は輝く剣と血色の剣を片手ずつに。
一人は炎を噴く剣を両手に。
一人は身の丈ほどはある大剣を両手に。
「ちょっと、そこのデカい剣の!」
「どっちだよ!」
「あなたバカでしょ!?」
「うるせぇ、あー、火炎放射器じゃないほう!」
「火炎放射器って……」
「"クラウソラス"よ!で、用件は!?」
敵の攻勢がやや収まってきたところで、黒髪の少女を敵の攻撃から庇いながら双剣の少女が答える。
「あの目障りなうざい壁、ぶっ壊してよ、全力で!」
「やっぱりバカじゃない!……でもまあ悪くないわ、乗った!」
察した青年が双剣の少女と共に"クラウソラス"のフォローに入る。彼女の周りに敵を寄せ付けないよう剣を振るった。
壁の至近に向かうには途中に敵が多すぎるが、"クラウソラス"の剣が放つ光の射程があれば距離は十分届くだろう。
「準備OK!いくわよ!」
エネルギーを溜め込み最早異音がする剣が高く掲げられる。二人が距離を取ったのを確認すると、"クラウソラス"は気合いを込めて叫んだ。
クラウ・ソラス
「冥闇切り裂く光の剣!!」
辺りを昼間の明るさにする閃光が、膨大な熱量と衝撃をもって白い壁に直撃する。
射線上には誰もいなかったが、もし無防備にその光線を受けた者があれば一瞬で蒸発していただろう。
――だが、その一撃をもってしても、白の壁には傷も焦げ跡も残らなかった。
「ははっ、地面が焦げたな!」
「……バカにしてるでしょ!?」
「全力でって言ったじゃん!」
「出し惜しみなんてしてないわよ!私もう無理!あとよろしく!」
過負荷で砕け散った剣をもう一度作り直すことはせず、"クラウソラス"は戦線を離脱する。
後の二人もあまりの敵の多さにキリがないと諦めをつけ、目配せをしてその背中を追った。
「……バーカバーカ。あなたがそのエクスカリバーみたいなやつでやったら良かったじゃない」
「無茶言うなよ!あと私、"エクスカリバー"って呼ばれるの嫌なんだけど」
「あ、俺は"ブラッドムーン"。よろしく」
「聞いてねぇし。私は叶和(とわ)。コードネームじゃなくてそっちで呼んで」
適当に迷い込んだ世界で息を整えつつ落ち合った三人は、子どものような悪態をつきながら名乗り合った。
「ふーん。"エクスカリバー"は"エクスカリバー"なわけね」
「嫌だっつっただろ!聞けよ!」
「それで、"ブラッドムーン"?の剣は、なんか名前ないのかしら」
意表を突かれた青年が反射的に「えっ」と声を漏らしたのを聞いて、"クラウソラス"は首を傾げる。
「聞いたらまずかった?」
「いや。初めて言われたからびっくりしてさ。剣の名前はないけど、必殺技の名前は紅月遍照(セイヴィア・レーヴァテイン)」
「じゃあ"エクスカリバー"と"レーヴァテイン"ね」
「だから……いいや、もう。それより私、必殺技って言葉の方が気になったんだけど」
「ん?ヒーローなんだから必殺技ぐらいあるだろ」
何言ってるんだこいつ、と、"エクスカリバー"と"レーヴァテイン"が互いに怪訝な顔を向けている傍で、"クラウソラス"は一人思案していた。
全力の一撃が効かなかった。普段は「手を抜いていても」、戦闘時の破壊が派手すぎるせいでよく支部長に厳重注意を受けているというのに。
「ただの壁じゃ、ない……」
「見りゃ分かるでしょ」
「うるさいわね。これでもショック受けてるのよ」
「じゃあ今度三人でやろうぜ。誰もいない時に、一気にバーンって」
「それ、あり!」
三人は次の作戦を立てる。構成員があまりいないタイミングを見計らって、壁にギリギリまで接近して全力の一撃を放ってみよう。
それで本当に壊れるかどうかはともかく、実行のためにああでもないこうでもないとベンチに腰掛けて語るのであった。
「"クラウソラス"と"エクスカリバー"、改めてよろしくな!なんか戦隊みたいでかっこいいな」
「戦隊は嫌だけど、しばらく共同戦線ってことで」
「……はいはい、どっちでも同じ、どっちでも同じ」
目的が「計画の阻止」から「壁の破壊」に変わっている事には気づいていない、バカ三人であった――
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夜空色の装束の戦闘員は、まるで無限に溢れ出してでもくるかのように、斬っても斬っても次々現れる。
その強さも、戦い方も様々で、集団戦法をとる一団もあれば、各個で戦う者もある。
ヒトの姿をしている者もあれば、まるで生気を感じられない影のような者もある。
共通して言えるのは、全員がオーヴァードに違いないということぐらいだろう。
「おまえ、さっきから邪魔なんだけど!」
「ひどくね?俺の範囲に入ってくるからだろ!」
「あーもう、うるさいのよあんたたち!」
その戦闘員集団の真ん中で剣を振り回しながら、一際騒がしい三人がいた。
一人は輝く剣と血色の剣を片手ずつに。
一人は炎を噴く剣を両手に。
一人は身の丈ほどはある大剣を両手に。
「ちょっと、そこのデカい剣の!」
「どっちだよ!」
「あなたバカでしょ!?」
「うるせぇ、あー、火炎放射器じゃないほう!」
「火炎放射器って……」
「"クラウソラス"よ!で、用件は!?」
敵の攻勢がやや収まってきたところで、黒髪の少女を敵の攻撃から庇いながら双剣の少女が答える。
「あの目障りなうざい壁、ぶっ壊してよ、全力で!」
「やっぱりバカじゃない!……でもまあ悪くないわ、乗った!」
察した青年が双剣の少女と共に"クラウソラス"のフォローに入る。彼女の周りに敵を寄せ付けないよう剣を振るった。
壁の至近に向かうには途中に敵が多すぎるが、"クラウソラス"の剣が放つ光の射程があれば距離は十分届くだろう。
「準備OK!いくわよ!」
エネルギーを溜め込み最早異音がする剣が高く掲げられる。二人が距離を取ったのを確認すると、"クラウソラス"は気合いを込めて叫んだ。
クラウ・ソラス
「冥闇切り裂く光の剣!!」
辺りを昼間の明るさにする閃光が、膨大な熱量と衝撃をもって白い壁に直撃する。
射線上には誰もいなかったが、もし無防備にその光線を受けた者があれば一瞬で蒸発していただろう。
――だが、その一撃をもってしても、白の壁には傷も焦げ跡も残らなかった。
「ははっ、地面が焦げたな!」
「……バカにしてるでしょ!?」
「全力でって言ったじゃん!」
「出し惜しみなんてしてないわよ!私もう無理!あとよろしく!」
過負荷で砕け散った剣をもう一度作り直すことはせず、"クラウソラス"は戦線を離脱する。
後の二人もあまりの敵の多さにキリがないと諦めをつけ、目配せをしてその背中を追った。
「……バーカバーカ。あなたがそのエクスカリバーみたいなやつでやったら良かったじゃない」
「無茶言うなよ!あと私、"エクスカリバー"って呼ばれるの嫌なんだけど」
「あ、俺は"ブラッドムーン"。よろしく」
「聞いてねぇし。私は叶和(とわ)。コードネームじゃなくてそっちで呼んで」
適当に迷い込んだ世界で息を整えつつ落ち合った三人は、子どものような悪態をつきながら名乗り合った。
「ふーん。"エクスカリバー"は"エクスカリバー"なわけね」
「嫌だっつっただろ!聞けよ!」
「それで、"ブラッドムーン"?の剣は、なんか名前ないのかしら」
意表を突かれた青年が反射的に「えっ」と声を漏らしたのを聞いて、"クラウソラス"は首を傾げる。
「聞いたらまずかった?」
「いや。初めて言われたからびっくりしてさ。剣の名前はないけど、必殺技の名前は紅月遍照(セイヴィア・レーヴァテイン)」
「じゃあ"エクスカリバー"と"レーヴァテイン"ね」
「だから……いいや、もう。それより私、必殺技って言葉の方が気になったんだけど」
「ん?ヒーローなんだから必殺技ぐらいあるだろ」
何言ってるんだこいつ、と、"エクスカリバー"と"レーヴァテイン"が互いに怪訝な顔を向けている傍で、"クラウソラス"は一人思案していた。
全力の一撃が効かなかった。普段は「手を抜いていても」、戦闘時の破壊が派手すぎるせいでよく支部長に厳重注意を受けているというのに。
「ただの壁じゃ、ない……」
「見りゃ分かるでしょ」
「うるさいわね。これでもショック受けてるのよ」
「じゃあ今度三人でやろうぜ。誰もいない時に、一気にバーンって」
「それ、あり!」
三人は次の作戦を立てる。構成員があまりいないタイミングを見計らって、壁にギリギリまで接近して全力の一撃を放ってみよう。
それで本当に壊れるかどうかはともかく、実行のためにああでもないこうでもないとベンチに腰掛けて語るのであった。
「"クラウソラス"と"エクスカリバー"、改めてよろしくな!なんか戦隊みたいでかっこいいな」
「戦隊は嫌だけど、しばらく共同戦線ってことで」
「……はいはい、どっちでも同じ、どっちでも同じ」
目的が「計画の阻止」から「壁の破壊」に変わっている事には気づいていない、バカ三人であった――
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