もう”サウス”は限界だ。
 自らも必死に防戦しながら、しかし万策尽きた”ノース”は悟る。
 Code:Xは失敗に終わる。
 世界は再び離散し、二人は消失し、
 誰も存在を維持できなくなった孤独な世界は、
 観測される他者を失って徐々に数を減らしていくだろう。

 「……別に、構わないが」

 ゼロになったって自分たちには一向に構わない。
 そう自分に言い聞かせながら、
 “ノース”はあとどれだけ”サウス”が時を稼げるか高速で見積もる。

 ギリギリだ。
 引きちぎれそうな腕と、もう言うことを聞かない足へ、
 残り滓のようなレネゲイドと気力を集中させる。

 「構わない。間に合わなくても」

 霞む視界で、それでも「塔」へと一時戻ったのは、
 決して撤退のためではない。

 もう一つの計画だけは。
 世界を繋ぐ絆だけは。
 世界の交差と収束を、
 その先にある進化した二重螺旋を、
 叶えることはできなくても、確定させなければ。

 「cord x」、それは新世界に繋げる言葉。
 今こうして、この「庭」で、
 交わるはずのなかった多くの絆が結ばれた。

 それはきっと、互いの世界を繋げる綱になるだろう。

 「……”サウス”。もう少しだけ、耐えてくれ」







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