「塔」、そう呼ばれていたのは、キミたちの生きてきた過去であった。
 エネルギー体へと性質を変え、空高くまで聳え立っているのは、
 束ねられ、新たな世界の未来となるために、
 “ノース”と”サウス”の手によって収束された世界そのもの。
 
 「……ごめん、”ノース”」

 キミたち、皆の世界を取り戻そうとする英雄たちの猛攻を受け、
 たったひとりで「塔」を維持していた少女が、
 白の剣を地面に突き立て、身体を預けるようにしながら、
 口元に悔しさを滲ませてぽつりと呟く。
 
 ――前に、もういつのことか分からないほどうんと昔に会った時、
 交わしたほんの僅かなやり取りが頭の中に浮かぶ。
 「どうして削除をやめたの?」
 「……おまえには分からんだろう。だから言わない」
 「そっかぁ」

 もう自分たちに勝ち目はない。
 世界を一つに繋げ、戻して、再出発するための鍵、
 「Code:X」は確実に失敗を迎えるだろう。

 「分かってた。たぶん」

 だから、もう戦うのをやめてもいい。
 世界が増えすぎて、観測し、保つ役目を果たせなくなった自分に、
 戻る場所など、存在する意義など全くない。

 「あとは、頼んだよ……!」

 それでも”サウス”はもう一度立ち上がる。
 あと僅かな時間を稼ぐためだけに。









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