「よぉ、”ノース”。賭けは俺の勝ちだな」

 “ノース”が「塔」に設けた枢密部に戻ると、
 そこには銀の青年が先に待っていた。

                     入力
 「約束の、最後のコードをEnterしにきたんだ。Code:Xの実行者権限を寄越しな」
 「……盟約違反もここまで来ると清々しいもんだ」
                         絆
 「そう固いこと言うなよ。結ばれたコードを確定しなきゃ全部終わりだろ……おまえがその気になりゃ、ヒトや俺なんぞ筆先一つで存在ごと泡のように消し飛ばせるっていうのに、そうしなかったのはどこかで俺を最後の頼みの綱に思ってたからだ。違うか?」
 
 しばらく黙っていた“ノース”は、やがて竜の青年の赤い目を見つめ、
 経った時間を概算すると、他に手がないことを認めため息をつく。
 相変わらず“ノース”は無表情のままで、しかし遂行を諦めて、
 特別なレネゲイドと共に、「dxcordx」、と、
 世界に走っているコードを書き換えるためのパスワードを伝えた。

 「ヒトのためなんぞに、よくこんな危ない橋を渡るものだ」
 「おまえと似たようなもんだ。ヒトの代わりに感謝してやるぜ」

 後は任せな。
 そう自信たっぷりに笑う銀の竜に背を向け、
 “ノース”は死に場所を得るために、再び外へと向かう。
 眼下に”サウス”の姿を捉えて飛び降りようとする青年の、
 最後まで変わらない後ろ姿に向かって、ヴェスナーは別れの言葉を告げた。

                    な り 損 な い

 「じゃあな、俺と同じ《ヒトに情の移った愚かな星》」






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