2019年1月20日、0時00分00秒。
 刻まれた瞬間に、カウントダウンが始まる。

 部屋から出た。窓の外を見た。瞬きをした。
 そのときキミは見ただろう。
 砂の城のように崩れて繋がる世界を。
 
 たくさんの色が濃紺に繋がる、奇妙な空を。


 「交差に成功。"ノース"、残り24日だよ」
 「問題ない。Code:Aの組み上げに入る」
 「ラジャっ!」

 "サウス"が窓から飛び降りる。
 異変に気づいて集まってきた人々に、その中にいたかもしれないキミたちに、ふわりと着地した赤い髪の少女が笑いかける。

 「あ。オーヴァードがたくさん集まってる」

 少女を中心とした、理性を失いそうなほどの強烈なワーディングの中、屈託のない、邪気のない、よく通る明るい声で笑う。誰もが自分と目があったかのように感じたかもしれない。一人ずつを見て、浮かべる表情はなお微笑のまま。

 少女の足元から白い壁が湧き溢れる。壁は巨大な塔を囲うようにせりあがり、ただ一人、少女がその上に立って、集まっていた人々と世界を見下ろしていた。

 「この中に入ってきたらダメだからね?」
 
 何をした!飛んだ怒号に、少女は首をかしげつつ返答する。

 「生まれ変わるんだよ。"if"も"パラレル"もない、ひとつにまとまった世界に戻る。そうすれば、ヒトは停滞を終えて進化できる」

 「って、"ノース"が言ってた!」

 濃縮されたようなワーディングにあてられて、耐えきれず暴走したオーヴァードたちが少女に襲いかかる――すると生きているかのように白壁が変形し、キミにとって大切な人であったかもしれない、"サウス"へ危害を与えようとした生命体を次々に絶命させた。

 少女の表情は無垢なまま。いや、よく見れば、悲しそうですらあったかもしれない。

 「私は"サウス"」

 「邪魔したら容赦しないんだから。『切り捨てられる方の可能性』になりたくなかったら、おとなしくしてたほうがいいと思うなー……」
 
 またね、と手を振って、"サウス"は壁の向こうへと飛び降り消える。その後に壁の向こうから姿を現したのは、少女ではなく、夜空色のマントやジャケットを身につけた、驚くべき人数の戦闘員集団であった――




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